RESEARCH & DEVELOPMENT
野菜分析データベースを構築
野菜は「見た目」だけでなく
「中身」で評価する
野菜は本来、それぞれ固有の旬を持っています。旬の野菜は「おいしく」、「栄養価が高い」と言われていますが、同じように見えるホウレン草(図1)でも、栽培時期(旬)や栽培方法などの違いによって、「中身」が大きく異なっていることがわかってきました。
「野菜の健康診断」として、指定野菜(農水省)を中心にBrix糖度・ビタミンC・活性酸素補足能としての抗酸化力・硝酸イオンの月別・年別の分析を20年以上にわたり行ってきました。その分析データを蓄積することで“野菜の中身”を見える化し、世界屈指の分析データベースを構築しました。さらに「野菜の旬」の素晴らしさを科学的に検証し、学術論文(図2)として発表しています。
野菜の健康機能は世界中で研究されていますが、デリカフーズグループではゼブラフィッシュ(実験動物)を使って、遺伝子レベルまで検証しました。トマトの抗酸化成分(リコピンなど)が肝臓の脂肪分解酵素遺伝子に働きかけ、脂肪肝を予防する力があることを解明し、学術論文(図3)として発表しました。
独自の野菜品質評価指標
「デリカスコア®」の
産地導入と新たな展開
消費者/実需者ニーズに基づき、「野菜の健康診断」を中心に、安全・栽培・中身・流通に関する19項目からなる野菜品質評価指標「デリカスコア」を構築しました(図1)。この指標は、農林水産省フード・アクション・ニッポンアワード2010において、研究開発・新技術部門 優秀賞を受賞しました(図2)。
野菜品質評価指標
「デリカスコア」(図1)
FOOD ACTION NIPPON アワード2010
表彰状(図2)
多様化する野菜ニーズを評価するツールとして、また、より付加価値の高い野菜生産を目指す取組み指標として、全国の契約産地への導入を進めています。毎年、デリカスコアの産地導入は進んでおり、2020年には25道府県68産地まで拡大しました。
野菜・果物の栽培から流通・加工、販売、消費までのすべての過程で「デリカスコア」の利活用が始まっています。品種・苗・農法などの栽培評価や、鮮度・食べごろ・品質管理などの流通評価、こだわりや中身評価によるブランド化(販売促進)、栄養価や健康機能、安全性に基づいた消費拡大など、野菜流通のサプライチェーン・バリューチェーンのデファクトスタンダードになりつつあります。
[デリカスコアの利活用]
異業種との連携による新技術開発
非破壊検査装置の開発実績を基盤に、SDGsへの展開を加速
産官学11機関と連携した農林水産省研究委託助成金「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」を受けて、トマトのBrix(おいしさ)・栄養素(リコピン)・抗酸化力を計測・選果できる非破壊選別装置を開発しました(図1)。この技術開発により「抗メタボ青果物の選別方法」で特許を取得しました。また、大手光学機器メーカーと協働し、レモンの内部障害(中腐れ)を検出する非破壊選果装置を開発しました(図2)。
(図1)
(図2)
抗メタボ青果物の
選別方法
特許証
地球温暖化による様々な影響に対応し、持続可能なスマート農業やスマート・フード・チェーンの構築がSDGs(Sus
tainable Development Goals)としての喫緊の課題です。農林水産省ではカーボンニュートラル2050に対応して「みどりの食料システム戦略」が策定されました。「機械化・省人化による労働生産性の向上」や「データ・AIの活用による加工・流通の合理化」、「食品ロスの削減など持続可能な消費の拡大」、「栄養バランスに優れた日本型食生活の総合的推進」などにデリカフーズグループも取組んで参ります。
野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養機能に加えて、生体を調整するチカラをもっています。抗酸化力、免疫力、解毒力。野菜や果物のもつこれらのチカラを2万サンプル以上のデータにもとづき分析。野菜の色や産地によってチカラが違い、複数の食材を使ったり、調理方法によってもチカラの大きさが変わってくることなどがわかってきました。なぜ野菜は体にいいのか、本書で明らかにされます。
著者は研究者であると同時に、毎日、外食産業向けに野菜を卸す企業の社長を経験しました。研究室の中だけではなく実学を通して、長寿時代の健康を考えます。
食と健康を意識する生活者はもちろん、栄養士・調理師、外食業者、ひいていは研究者、生産者にとっても、目からウロコの可視化された野菜のチカラが満載です。
わたしたちは、機能性野菜をどのようにとらえ、活用していけばよいのでしょうか。
機能性野菜に関する最新情報をはじめ、品目ごとの成分紹介、機能性成分の健康効果、機能性を高める品種、栽培方法や具体的な産地事例などを紹介。
品種や栽培、6次産業化に向けたレシピなどが記載され、農業生産者にとって品目・品種選びに有効だと考えられます。
また、品目ごとの成分分析と健康効果の解説は栄養管理の面でも非常に役立つことから、食べることから健康を考える「食」への意識の高い消費者にもおすすめします。